菜花(なばな)はおいしい

富山市八尾町の松原台地は標高が200m弱であるが、富山平野越しに
3000m級の立山連峰を仰ぎ見ることができる気持ちのよいところだ。
2年前から、台地の中でも最も高い辺りの畑を借りて野菜を育ててきた。
9月以降は用水に水が回らなくなる問題はあるが、味のいい根菜類が育つ
土と気象条件に恵まれている。

この春は気温が低い日が遅くまで続いたからか、アブラナ科の白菜やキャベツ
あるいはブロッコリーの菜花が今が盛りと咲いている。いずれは、次の野菜を
栽培するために土の中へ鋤込まれる運命だ。

しかし、「薹がたつ」とは、盛りがすぎて味が落ちたことを意味するようだが、
どうしてどうして薹がたった菜花は、この時期の旬である山菜に比べれば、
えぐみはなく、優しい甘みをジューシーに蓄えて実にうまい。
昔の人はそこまで知り尽くしていたのだろう。鋤込む直前まで、菜花のやわらか
部分を「サラダ」のように食べていたそうだ。

燃料を使って作られる季節感のない野菜だけではなく、自然の恵みそのものである
菜花を食べてみてはどうだろうか。種類を選べば、彩り、食感、味がずいぶん豊か
な料理が工夫できる。